2025年10月号
インフルエンザ予防接種を福利厚生費で処理しよう
◆流行シーズンに突入したインフルエンザ
厚生労働省は3日、令和7年第39週の定点当たり報告数が1.00を上回り、インフルエンザが流行シーズンに入ったことを発表しました。例年より2カ月ほど流行入りが早くなっております。
◆社員インフル罹患は会社にも損失
社員がインフルエンザに罹患すると当然復調するまで暫く欠勤となります。それでなくとも人出不足の昨今では本人も辛いでしょうが会社にとっても損失となります。社員へ日常の健康管理を求めると共に、早めの予防接種を推奨することが望ましいと考えられます。予防接種による発症予防効果はワクチン株の当り外れもありますが、一般的に50%〜60%程度、そしてワクチン接種により重症化を防げる可能性もあります。
◆予防接種経費処理の費用と条件
予防接種費用はおおよそ3千円〜5千円の目安です。予防接種の費用を会社で負担する条件は、著しく高額ではなく、業務上必要であり、従業員全員を対象としていれば通常は福利厚生費として計上可能です。
◆留意点
全員対象と言いながらも、予防接種を強制することはできないことに注意が必要です。インフルエンザ予防接種は法的な強制力がなく、会社が接種を強制することはパワハラ問題に繋がりかねません。また、アレルギーや既往症等による副反応のリスクもあるため、社員個別事情も配慮することになります。
事務所から一言
高市新首相就任の弁「ワーク・ライフ・バランスを捨てて、働いて、働いて、・・・、働いて参ります」が論議を呼んでおります。報道でこの言葉を聞いて、一昔前の嫌な時代を思い出しました。
私の損害保会社在職時の頃、家内が初産で朝産気付き病院へ連れて行くと管理職へ電話連絡したところ、帰ってきた返事は「お前が生むのか!!!」でした。有給休暇など入社以来一日も取ったことがないと豪語している先輩もおりました。また、損保時代私は警察マーケットに長く関係しておりましたが、懇意にしていた取引先元警察官の話では、親が危篤と連絡したら、「まだ死んでいないんだろ!!!」だそうです。ある県警本部長歴任者の方は、現職時代一人も部下の海外旅行を許可したことはないと胸を張っておりました。「事件があったらどうする?」で終わりだそうです。年代の相違や業種そして社風もあると思いますが、大なり小なりこんな感じでした。高市首相の登場でまたこのような時代が巡るのでしょうか。
高市新首相のワーク・ライフ・バランスを捨てる発言に対して、東京大学加藤陽子教授が「これは軍隊の中隊長レベルの発想です。それも、負けている軍隊。「身を捨てる覚悟」を見せることでしか隊の統率をはかれない。とても残念です」(10月15日朝日新聞オピニオン)とあり、的を射る例え話と感じました。
高市首相が好きで働くならそれは勝手で良いのでしょうが、どうやらそうでもなさそうです。10月22日の報道では、厚労省大臣が高市首相の指示を受けて、現在の労働時間規制緩和を検討するそうです。簡単な言い方では「日本国民はもっと働け、そのため労働規制を緩めろ」です。
思えば、今の日本の繁栄は先人の勤勉刻苦の賜物です。団塊の世代以降も会社のため家族のために頑張りました。滅私奉公が当然視され皆が脇目もふらず働いている中で、有給休暇を申し出ることは天下の大罪を犯すような雰囲気がありました。労基法で最大40日の有給休暇枠は全く意味がありませんでした。働かせる側や働く側の勤務マインドと法令規則の実質乖離はとても大きいものでした。
しかし、経年的にこの乖離を解消するために多くの法令改定が行われました。例えば、有給休暇を年間10日以上保有する社員に対しては、会社は5日以上の有給休暇を強制的に付与することを就業規則に明記しなくてはならなくなりました(社員が自主的に5日以上有給取得すれば更なる上乗せは必要ありません)。この罰則付きの強行規定は大変インパクトのあるものです。
また、36協定では、これまで年間残業時間が実質青天井(無制限)であったものが年間720時間という制限が付けられました(労基法制定以来70年ぶりの大改革です)。これも働き方改革の大きな目玉となっております。
何故に働き方に改革が求められてきたかというと、言うまでもなく労働者の健康を保持するためです。何の歯止めもなければ働き方や働かされ方は過重労働へ流れる危険性をはらみます。これを抑止するために少しずつ前進してきた労働法規制諸法令の針を逆戻りさせる動きに違和感があります。実際、過労死請求件数は2020年2835件から2024年4800件(推定)と大きく増加している中での労働法規制緩和は疑問があります。
労働者の命と健康を守ることが延いては企業の発展につながります。今後も労働法規制の動向を注意深く見つめ適宜事業主様へアナウンスして参ります。
厚生労働省は3日、令和7年第39週の定点当たり報告数が1.00を上回り、インフルエンザが流行シーズンに入ったことを発表しました。例年より2カ月ほど流行入りが早くなっております。
◆社員インフル罹患は会社にも損失
社員がインフルエンザに罹患すると当然復調するまで暫く欠勤となります。それでなくとも人出不足の昨今では本人も辛いでしょうが会社にとっても損失となります。社員へ日常の健康管理を求めると共に、早めの予防接種を推奨することが望ましいと考えられます。予防接種による発症予防効果はワクチン株の当り外れもありますが、一般的に50%〜60%程度、そしてワクチン接種により重症化を防げる可能性もあります。
◆予防接種経費処理の費用と条件
予防接種費用はおおよそ3千円〜5千円の目安です。予防接種の費用を会社で負担する条件は、著しく高額ではなく、業務上必要であり、従業員全員を対象としていれば通常は福利厚生費として計上可能です。
◆留意点
全員対象と言いながらも、予防接種を強制することはできないことに注意が必要です。インフルエンザ予防接種は法的な強制力がなく、会社が接種を強制することはパワハラ問題に繋がりかねません。また、アレルギーや既往症等による副反応のリスクもあるため、社員個別事情も配慮することになります。
事務所から一言
高市新首相就任の弁「ワーク・ライフ・バランスを捨てて、働いて、働いて、・・・、働いて参ります」が論議を呼んでおります。報道でこの言葉を聞いて、一昔前の嫌な時代を思い出しました。
私の損害保会社在職時の頃、家内が初産で朝産気付き病院へ連れて行くと管理職へ電話連絡したところ、帰ってきた返事は「お前が生むのか!!!」でした。有給休暇など入社以来一日も取ったことがないと豪語している先輩もおりました。また、損保時代私は警察マーケットに長く関係しておりましたが、懇意にしていた取引先元警察官の話では、親が危篤と連絡したら、「まだ死んでいないんだろ!!!」だそうです。ある県警本部長歴任者の方は、現職時代一人も部下の海外旅行を許可したことはないと胸を張っておりました。「事件があったらどうする?」で終わりだそうです。年代の相違や業種そして社風もあると思いますが、大なり小なりこんな感じでした。高市首相の登場でまたこのような時代が巡るのでしょうか。
高市新首相のワーク・ライフ・バランスを捨てる発言に対して、東京大学加藤陽子教授が「これは軍隊の中隊長レベルの発想です。それも、負けている軍隊。「身を捨てる覚悟」を見せることでしか隊の統率をはかれない。とても残念です」(10月15日朝日新聞オピニオン)とあり、的を射る例え話と感じました。
高市首相が好きで働くならそれは勝手で良いのでしょうが、どうやらそうでもなさそうです。10月22日の報道では、厚労省大臣が高市首相の指示を受けて、現在の労働時間規制緩和を検討するそうです。簡単な言い方では「日本国民はもっと働け、そのため労働規制を緩めろ」です。
思えば、今の日本の繁栄は先人の勤勉刻苦の賜物です。団塊の世代以降も会社のため家族のために頑張りました。滅私奉公が当然視され皆が脇目もふらず働いている中で、有給休暇を申し出ることは天下の大罪を犯すような雰囲気がありました。労基法で最大40日の有給休暇枠は全く意味がありませんでした。働かせる側や働く側の勤務マインドと法令規則の実質乖離はとても大きいものでした。
しかし、経年的にこの乖離を解消するために多くの法令改定が行われました。例えば、有給休暇を年間10日以上保有する社員に対しては、会社は5日以上の有給休暇を強制的に付与することを就業規則に明記しなくてはならなくなりました(社員が自主的に5日以上有給取得すれば更なる上乗せは必要ありません)。この罰則付きの強行規定は大変インパクトのあるものです。
また、36協定では、これまで年間残業時間が実質青天井(無制限)であったものが年間720時間という制限が付けられました(労基法制定以来70年ぶりの大改革です)。これも働き方改革の大きな目玉となっております。
何故に働き方に改革が求められてきたかというと、言うまでもなく労働者の健康を保持するためです。何の歯止めもなければ働き方や働かされ方は過重労働へ流れる危険性をはらみます。これを抑止するために少しずつ前進してきた労働法規制諸法令の針を逆戻りさせる動きに違和感があります。実際、過労死請求件数は2020年2835件から2024年4800件(推定)と大きく増加している中での労働法規制緩和は疑問があります。
労働者の命と健康を守ることが延いては企業の発展につながります。今後も労働法規制の動向を注意深く見つめ適宜事業主様へアナウンスして参ります。

