◆2020年11月号 同一労働同一賃金について(続)

◆新たな関連判決が出ました
先月号では同一労働同一賃金に関する最高裁判決(1.ハマキョウレックス事件(運輸業)、
2.長澤運輸事件(運輸業)、3.大阪医大事件、東京メトロ事件)に基づき、同一労働同一賃金が問われる事例を取り上げました。来年4月1日より、中小企業に対しても同一労働同一賃金が求められることになり各企業とも対応を迫られております。今回新たに関連判決がでましたのでご案内いたします。

◆日本郵政事件最高裁判決
日本郵便で郵便物集配等担当の有期労働契約者が正社員との下記待遇格差是正を求めた事件に対する最高裁判決が出ました。

①扶養手当、②年末年始勤務手当、③年始祝日給、④夏季冬季有給休暇、⑤病気有給休暇

最高裁判決では、正社員には適用し有期労働契約者には適用しないこれら格差は合理性がなく是正されるべきとのものでした。

同一労働同一賃金事件に対する会社の伝統的主張は「正社員として有為な人材確保を行うために制度に格差をつけている」ことです。これに対して最高裁は、このことを認めるにしても、雇用継続が長期間反復継続している今回の有期労働契約者にも継続的人材確保のためとして同様に便益を与えるべきとされました。

◆名古屋自動車学校事件(名古屋地裁)
自動車学校の技能指導員を担当していた職員が、定年嘱託再雇用になり、基本給がこれまでの16万円~18万円から、7万円~8万円と大幅な減少になりました。担当する業務と責任はこれまでと変わりません。このため格差是正を求めた訴えが名古屋地裁へ行われました。

名古屋地裁では、「定年前の6割を下回れば不合理」と明確な線引きを行ったことで注目される判決です。基本給7万円~8万円は若い正社員すら下回る基本給水準であり不合理な待遇格差であるとされました。

嘱託定年後の同一労働同一賃金事件では、長澤運輸事件最高裁判決があります。この事件では賃金が定年前の79%に低下しておりますが、退職金が支給され、定年退職者に対する調整があり、年金受給までに2万円を上乗せするなどのことから、不合理性はないとされました。

それにしても、名古屋自動車学校事件の基本給の下がり方は尋常ではないと思われます。嘱託再雇用で賃金が下がることは社会的に広く行われておりますが、5割以上の賃金減額は常識的ではありません。定年前の6割を下回れば不合理な賃金であるという名古屋地裁判決が今後一つの指標になりそうです。

◆同一労働同一賃金で今後確認すべき事項
これまでの最高裁判決を見ると、各種手当で職務内容と関係性が乏しいもの(通勤手当、
扶養手当、給食手当、作業手当、無事故手当、皆勤手当)は「生活保障を目的としたもの」とみなされ、正社員と有期労働契約者の格差は基本的に不合理とされる可能性があります。一方、企業業種毎に、正社員だからこそこの手当が必要という手当も存在すると思いますので、正社員だけに支給する手当の場合には、その論拠を明確にしておくことが必要です。

また、これまでの多くの企業の賃金設計では、各種手当がいわば基本給の増量剤として用いられ、名称と実態がかけ離れていることもありますので、今一度各種手当が実態通りになっていることの確認も必要です。最高裁判決から一例を見ると、正社員のみに住宅手当を出していることに対して、片やハマキョウレックス事件では合理性が認められ、一方東京メトロ事件や日本郵便事件は合理性がないとして是正を求められております。この違いは、前者ハマキョウレックス事件では正社員のみ実際に転勤制度があり、そのために住居に要する費用に合理性を認められました。後者東京メトロ事件や日本郵便事件は転勤のない正社員に住宅手当が支給されており合理性を否認されました。

ある日突然有期労働契約社員が、わが社の賃金体系はパートタイム・有期雇用労働法違反であり、賃金体系を均等待遇してほしいと言い出すかもしれません。このような不測の事態に備えて、自社の賃金体系や諸手当について検証しておくことをお勧めします。

育児介護休業法の改定(子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得導入)

◆「子の看護休暇」制度とは
育児介護休業法により、小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10日) を限度として、子の看護休暇を取得することができます。

◆「介護休暇」制度とは
育児介護休業法により、要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度において5日(その介護、世話をする対象家族が2人以上の場合にあっては、10日)を限度として、介護休暇を取得することができます。

◆時間単位の休暇取得が出来るようになります
子の看護休暇・介護休暇の取得単位は、これまで1日単位または半日単位(1日の所定労働時間の2分の1。労使協定により異なる時間数を半日と定めた場合には、その半日)とされていますが、令和3年1月1日より、1時間単位での取得が可能となります。
また、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者には、半日単位での取得をさせなくてもよいこととされていますが、令和3年1月1日より、1時間単位での取得ができることとなります。

◆これから必要になる具体的対応
育児介護休業規程の見直しが必要となります。また、時間単位取得が困難な業務がある場合は、労使協定により、その業務に従事する労働者を対象労働者から除外することができるため、該当する業務がある場合は、労使協定の締結も必要となります。

事務所から一言
今日本中がコロナ対策GO TOキャンペーンの話で持ち切りですが、皆様はすでにご利用でしょうか。私もふと思い立って先日奈良京都の一泊旅行を行いました。奈良駅前ホテル9,000円が5,850円となりすごく得した気になりました。写真はウルウルの大きな眼をした子鹿が興福寺でおせんべいを期待しているところです。