渡邊人事労務パートナー事務所便り7月号をお届けします。

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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社員うつに対する先進医療

◆「光トポグラフィー検査」の開発
先月号で社員のうつ問題をとりあげましたが、心の病気は診断が難しく、精神科でも診断を下すまでに時間がかかることが多い病気であり、経営者としても対応に苦慮するところです。
しかしながら、医療技術の進展により客観的にうつ病を診断できるように「光トポグラフィー検査」というものが開発されておりますので今月号でご案内いたします。

◆検査の方法
この検査は、近赤外光(身体には無害)を使用して脳の活動状況を調べるもので、頭に近赤外光を当て、反射してくる光から脳血流の変化を読み取り、脳の活動状態を数値化します。
頭に光源と光検出機を内蔵したヘッドセットを着け、最初の10秒は「あ、い、う、え、お」を繰り返し、次の10〜70秒間では、同じ頭文字で始まる言葉を声に出して言い続けます。
このときに「あ、で始める言葉は…」と脳を使う際の血流の変化がポイントであり、血流量がどう変化するのかをグラフ化するそうです。このグラフにより、患者の状態(健常・ウツ病・躁ウツ病・統合失調症)が判定できるというものです。

◆「先進医療」に指定
この検査は2011年5月に厚生労働省の「先進医療」に指定され、大学病院などでは保険診療と組み合わせて検査を行う「混合診療」が可能となりました。病院によって費用は区々ですが、1回の検査で約1万3千円前後との情報があります。
この検査の出来る大学病院等の医療機関が限定されていることや、画期的な検査のため問合せが殺到して予約すらできない状況が続いているそうですが、病院・クリニックでの診断名に疑問をお持ちの方は、一度検査を受けてみるのも良いかもしれません。
しかしながら、この検査により100%間違いない診断が行える訳ではなく、臨床症例に基づく鑑別結果との一致率は7割〜8割であることも承知しておく必要があります。

◆受診命令には就業規則の定めが必要
 社員が望んで自ら光トポグラフィー検査を受ける場合には問題ありませんが、会社の命令でこの検査を受けさせるときには就業規則の定めが必要となります。社員には診療を受けることの自由及び医師選択の自由があります。これに対し就業規則において必要に応じた会社指定医の受診規定があることで合理的な受診命令が出来ることになります(最高裁判決、昭和61年3月13日、電電公社帯広局事件)
特に受診命令を行う医療機関がメンタル関連病院であれば、会社として尚更配慮が必要となりますことにご留意下さい。

育児介護休業規定が全面施行!
(本年7月1日)


◆ついに全ての企業に全面適用
厚生労働省は、“男女ともに仕事と家庭が両立できる働き方”の実現を目的として、2009年に「育児・介護休業法」を改正し、企業規模に応じて段階的な適用を行ってきましたが、今年7月1日からついに全ての企業に全面適用となりました。
これまで従業員数100人以下の中小零細企業については、短時間勤務制度など下記項目の適用が猶予されていましたが、本年7月1日からはすべての企業が対象となりました。一般の事業主の方には労基法等に比べて馴染みも認知も少ない法令ですが、仕事と家庭の両立支援・次世代対策として今後クローズアップされる法令であり、未対応の企業は早急に対応しなければなりません。

◆7月1日から全面適用となる主な制度
全面適用となる主な制度は、次の通りです。
(1)「短時間勤務制度」
3歳までの子を養育する従業員に対しては、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度を設けなければなりません。
(2)「所定外労働の制限」
3歳に満たない子を養育する従業員が申し出た場合には、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。
(3)「介護休暇」
家族の介護や世話を行う従業員が申し出た場合には、1日単位での休暇取得を許可しなければなりません。日数は、介護する家族が1人ならば年に5日、2人以上ならば年に10日となります。

◆就業規則等の見直しが必要
7月1日から新たに対象となる企業については、あらかじめ就業規則等に上記の制度を定め、従業員に周知しなければなりません。
対応が済んでいない場合は今後早急に対応が必要ですので、ご注意ください。

◆両立支援助成金との関係
育児介護休業法に関連した助成金として、両立支援助成金(子育て期短時間勤務支援助成金)があり、本改定により影響がでますので注意が必要です。
改定前の中小企業の場合、助成金対象となる社員は「少なくとも3歳に達するまでの子を養育する労働者」であれば条件を満たしておりましたが、7月1日以降は「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」が条件となります(3歳に達するまでの子を養育する労働者であれば改定後の法律要請通りであり、助成金支援の必要性がないためです)。
両立支援助成金は、当初100万円からスタートし、金額が高いことで認知度が上がり、事業主の積極的な利用が続いた結果70万円に下がり、今年はとうとう40万円となりました。助成金金額が少なくなることは残念ですが、それだけ助成金のお陰で子育て期の短時間勤務支援を受ける労働者がでたと受け止めるべきでしょう。

 障害者雇用率が強化されます
(平成25年4月1日)


◆強化される割合
 すべての事業主は、一定の割合以上で障害者を雇用するよう、法律で義務づけられています。その割合は、民間企業、公的機関ごとに法定雇用率として定めていますが、平成25年4月1日から以下のように強化されます。障害者雇用はCSR(企業の社会的責任)の観点から大企業を中心に既に積極的に取り組まれておりますが、中小企業だから特別扱いで免除という時代ではなくなりつつあります。

 ○民間企業 1.8%→2.0%
 ○国、地方公共団体など 2.1%→2.3%
 ○都道府県等の教育委員会 2.0%→2.2%

◆強化される企業
 今回の法定雇用率の変更に伴い、障害者を1人以上雇用しなければならない事業主の範囲が、「従業員56人以上」から「同50人以上」に変わりますので、従業員50人以上56人未満の事業主の皆さまは、特にご注意ください。
(注)従業員数×2%>1以上の数字となれば障害者の雇用が義務付けられます。

◆障害者の方は簡単に採用できません
当所長が損害保険企業人事部在職の時に、障害者雇用に苦心したことがあります。大手企業であるほど法定雇用率遵守に迫られ障害者雇用に努力しております。特に軽度身体障害の方はいわば売り手市場であった記憶があります。障害者の方の採用は思った程簡単ではないことを承知の上、すぐ来る来年4月1日に備えることが良いのではないか思います。
 法令の要請で仕方なく障害者の方を採用するという消極的なスタンスではなく、CSRの観点、障害者の方の戦力期待、あるいは障害者雇用に付随する特定求職者雇用開発助成金(通常勤務者の障害等級3級〜6級で135万円)等新たな視点で臨まれることも有用でしょう。

所長より一言

我が家には黒のラブラドールレトリーバー犬桃太郎がおります。この5月で5歳になり、人間でいえば分別盛りの大人でしょう。生後2ヵ月から今日までつきあっているとお互いが何を思っているのかよく分かるようになります。とくに犬の世界は言葉がないだけに一層、家族一人一人の気
持ちをストレートに理解できるのでしょう。

桃太郎は走るのも大好きな犬であり、先日妻が公園で走らせたところ、キャンと叫んで突然うずくまったそうです。一体何があったのか分からず、早速動物病院で診てもらったところ、なんと後ろ右足が前十字靭帯断裂の大けがと診断されました。

 人間でも前十字靭帯断裂といえば大変な怪我です。桃太郎をなんとか直してやりたい思いで病院探しを探したところ、なんとかかりつけの動物病院で紹介された診療機関では、手術料だけで55万円!インターネットで検索しても50万円が相場でした。これは最善の手術方法であるTPLO(足にスチール金具を埋め込む手術で、日本中でもこの手術をできる認定医が限定されているそうです)ではどうしてもその値段になるとのことでした。

桃太郎はペットショップで、15万円で割引購入した犬です。その犬に50万円の治療費です。例えば15万円で買った電気製品に不具合が発生し、修繕費が50万円掛かるとしたら、躊躇無くまた新たに15万円の新品電気製品を買うことでしょう。犬の場合、今の飼い犬を亡きものにして新しく子犬を15万円で買うことができない辛さがあります。それは心が繋がった家族同様の生き物だからです。

ベストの診療機関を探し求める中で、ようやく藤沢にある日大の大学付属動物病院を探し当て、6月中旬に手術をしてもらいました。足の皮膚を剥いて、骨に金具を締め付ける大手術であり、痛くないわけがありません。手術翌日麻酔から覚めた桃太郎と面会したところ、私の顔から目を話さずずうっと目で何かを訴えていているのです。こんなに長く目で訴えている桃太郎を知りませんでした。多分桃太郎は「ボクとても痛かったんだよ」と言ったのに違いありません。直るために頑張るんだよとしか声を掛けられませんでした。その一方で食欲は相変わらず旺盛で、お土産のバナナを上げるともう目つきが食べ物ほしさに変わり救われた思いでした。お陰様でいまはぎこちない歩き方ではあるものの四本足で歩けるようになりました。

社労士である私の専門領域の一つに健康保険があります。顧問先から医療費が嵩んで困っている等のご相談があれば、高額療養費制度の利用をご教示し、医療費を一定限度に抑えることをご案内できますが、自分の犬には高額療養費制度がないことが誠に残念です。因みに桃太郎の50万円の医療費に対し、一般水準所得者の人間の場合、医療費は、健康保険高額療養費を申請することにより、82,430円で賄えることとなります。

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