渡邊人事労務パートナー事務所便り11月号のお届けです

社会保険労務士法人 渡邊人事労務パートナーズ 代表社会保険労務士 渡邊武夫
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障害者雇用に関する企業対応

 貴社では障害者の方が就業されておりますでしょうか、あるいは雇用計画がありますでしょうか。現在の日本では障害者の方の雇用促進が企業に求められております。このため、今月号では障害者雇用に関する企業対応を取り上げました。なお、「障害者」については「障がい者」と記すべきであるとか、障害者の言葉自体が不適切であるとのご意見もありますが、ここでは法律の言葉として障害者を用います。

◆障害者雇用を促進させる社会的推進力(CSR)
障害者雇用を促進させる社会的推進力としてはCSR(Corporate Social Responsibility・・・企業の社会的責任)があります。これは、企業・団体が利益を追求するだけでなく、ステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指します。即ち障害者の雇用も企業の社会的な責任行為とされます。ただし、次の障害者雇用法と異なることは、あくまでも企業・団体の自由意思で障害者を雇用することです。

◆障害者雇用を義務つける法令(障害者雇用促進法)
障害者雇用促進法は、企業に対して障害者雇用を義務付ける法的強制力をもった法令です。常用労働者56名以上の企業には障害者雇用を要請するとともに、障害者雇用が進まない一定規模の企業には、障害者雇用納付金(1名不足につき毎月5万円、年間60万円)を納付させる一方で、積極的に障害者雇用に取り組んでいる企業には障害者雇用調整金(1名余剰につき毎月2万7千円、年間32万4千円)を支給する、いわば企業に対しアメとムチを使い分ける法律です。さらに、障害者雇用不足の場合、障害者雇用納付金を納付すればそれで許されることとはならず、改善指導・勧告や最悪企業名公表にまで至ります。
そして、障害者雇用納付金と障害者雇用調整金の対象となる企業規模は次の通り段階的に強化されることとなります。平成27年4月からは常用労働者101名以上の企業も障害者雇用納付金と障害者雇用調整金の対象となるため、強化対象企業では方針決定が必要となります。

(注)法定雇用数の計算方法(民間企業)
  常用労働者数×1.8%(端数切り捨て)


*障害者雇用が求められる企業
 常用労働者 56名以上の企業
*障害者雇用納付金と障害者雇用調整金の徴収・支給対象となる企業
  (昭和52年〜)常用労働者が301人以上
  (平成22年〜)常用労働者が201人以上  
  (平成27年4月〜)常用労働者が101人以上
 
◆障害者雇用に対する助成金インセンティブ
企業がハローワークを通して障害者を雇用したときに雇用保険から助成金が支給され、企業にとりインセンティブ(雇用拡大の誘因)となります。とりわけ障害者雇用については規模の大きい助成金が用意されております。この助成金は企業に積極的に障害者雇用を促すとともに、障害者が職場の戦力になることを認識させるきっかけ作りの意味があります。

 障害者雇用で中小企業に支給される助成金(例)   特定求職者雇用開発助成金(重度障害者以 外(3級〜6級)の身体・知的障害者を雇用したときの助成金)→135万円


異業種から「デイサービス」事業への参入

◆本業でのノウハウを活用
高齢者に食事や入浴を日帰りで提供する「デイサービス」に、異業種の中小企業が相次いで参入しているようです。有料老人ホームなどの介護施設と比較して初期投資が少なく、人員配置の基準も比較的緩いというのが、その理由のようです。
本業で培ったノウハウをデイサービスでも活用することで独自色を出し、大手業者に対抗しようとしています。

◆非常に高い伸び率
厚生労働省の発表によれば、2011年度に介護サービス市場は約8.3兆円に達する見通しで、この数字は介護保険制度が始まった2000年度の2.3倍に相当します。
サービス内容は「老人ホーム」や「訪問介護」など多岐にわたりますが、自宅暮らしの高齢者向けでは「デイサービス」の伸び率が高く、「訪問介護」の2009年度における市場規模は2006年度に比べ2.6%増にとどまったのに対し、「デイサービス」は33%増となっています。

◆中小企業が続々参入
市場拡大要因の1つが「中小企業の参入」です。老人ホームは開設までに数億円かかると言われていますが、デイサービスの場合は初期投資が1,000万円程度で済み、また、1カ所でまとめてサービスを提供するため、訪問介護に比べて収益性が高くなっています。
食事・入浴・レクリエーションなどを提供するといったデイサービスの一般的なサービス内容や開設までのプロセスを標準化することで、出店コストや運営費を抑制し、フランチャイズチェーン展開する事業者も出てきているようです。

◆独自のサービス提供も
しかし、供給過多となった都市部では、参入はしたものの閉鎖するケースも出始めています。このため、独自サービスにより利用者を増やそうとする動きも広がっています。
独自サービスとして今注目されているのが、食品の宅配や家事代行などです。介護報酬の引上げが見込まれにくい中、低価格で受けられるサービスを利用者に提供することで、収益の安定や新規顧客の獲得につなげたいと考えているようです。

当事務所より一言
 今月号は障害者雇用を、メインで取り上げましたが、当職がかつて永年勤務した損害保険会社は障害者雇用率がとても悪くいわば札付企業でした。人事に在籍していた当職は何回か当局に呼び出しを受けて改善に乗り出し、法定雇用率1.8%まで引き上げました。
 法定雇用率が悪い原因を探ると、職場で障害者と一緒に働きたくないという偏見が一部にありました(例えば、日商簿記資格を有する難聴者を、電話がとれないとの理由で断っていた事例がありました。数十人もいる経理部門の中で電話がとれないからという不可解な理由でした)。このため、まずは社内文化から変える必要があると判断し、人事担当代表取締役からメッセージを発信してもらい、社内文化が漸次改善されました。また、多くの障害者の方を採用するなかで、優秀な方も現にいらっしゃいました。今後障害者雇用に取り組む企業のご参考になれば幸いです。

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